「うちの社員は年配の人が多いから、AIは無理だと思います」
群馬で経営者の方と話していると、何度か聞いてきた言葉です。
気持ちは分かります。新しい道具ですし、パソコンが得意ではない人に「今日からAIを使ってください」と言っても、すぐには動きません。
でも、私は最近、少し違う見方をするようになりました。
「使ってくれない」のではなく、「何に使えばいいのか分からない」だけではないか。
先に結論
社員がAIを使わないとき、最初に見直したいのは年齢や能力ではありません。
渡している仕事が抽象的すぎないかです。
「AIを使ってみて」ではなく、
「誰が・何を・いつやるか」まで小さく決める。
私は、自分自身が半年動けなかった経験から、ここがいちばん大事だと感じています。
Webマーケティングに26年携わり(フリー歴15年)これまで700名以上のクライアント様を支援してきました。
AIを配っただけでは、社員はなかなか使わない
2026年8月、首都高速道路での生成AI活用事例が紹介されていました。
首都高は、安全を最優先する仕事です。従業員の平均年齢も比較的高く、新しい技術の導入には慎重になりやすい組織だったそうです。
そこで課題になっていたのが、「生成AIを何に使えばいいのか分からない」ということでした。
ところが取り組みを進めた結果、月100回以上Gemini(ジェミニ)を使う従業員は、2025年2月の22人から2026年2月には224人へ増えたと報じられています。
10倍以上です。
社員が突然若くなったわけでも、AIが得意な人だけに入れ替わったわけでもありません。
「AIを使ってください」から、「この仕事で使えます」へ、使い道が具体的になった。
私はこの話を読んで、自分自身のことを思い出しました。

企業研修をしても、ほとんど使われませんでした
以前、ある企業で社員向けのAI研修をしたことがあります。
使い方を説明して、実際に触ってもらいました。研修中は「便利ですね」「こんなこともできるんですね」という反応もありました。
私は、これなら仕事でも使ってもらえるかなと思っていました。
でも、その後どうなったか。
実際に使い続けてくれる人は、ほとんどいませんでした。
これは私にとって、かなり大きな気づきでした。
使い方を知らないから使わないのだと思っていたのですが、そうではなかったのです。
研修で一度使えても、普段の仕事に戻れば、いつものやり方に戻ります。
わざわざAIを開いて、「今日は何に使おう?」と考えるところから始めなければならない。
これでは、なかなか続きません。
検索の中にAIが入ってきて、状況が変わりました
ところが、その後、少しずつ状況が変わってきました。
検索エンジンそのものにAI機能が入るようになってからです。
今まで検索していた場所で、そのままAIの回答を見る。
つまり、「新しいAIツールを使う」という感覚ではなく、いつもの検索の延長でAIに触れられるようになったのです。
そこから、AIが少しずつ身近なものになっていきました。
ここで気づいたこと
AIの使い方を教えるだけでは、定着しない。
いつもの仕事の中に、AIを使う場面を作る必要がある。
この経験から、私は「社員がAIを使わない」という問題を見る目が変わりました。
だから今なら、ただ「AIを使ってみてください」とは言いません。
たとえば、
こんなふうに仕事とセットで渡します
「毎朝やっているこの確認を、まずAIでやってみましょう」
「いつも検索しているこの作業を、今日はAIを使って調べてみましょう」
という渡し方をします。
新しい仕事を増やすのではなく、いつもの仕事の一部をAIに置き換える。
そのほうが、ずっと入りやすいと感じています。
「AIを使って」ではなく「いつもの仕事をAIで」に変える
この経験をしてから、社員にAIを使ってもらうときの考え方も変わりました。
「AIを使ってみて」「業務効率化に使って」「何か便利な使い方を考えて」と言われても、受け取った側は困ります。
何に使えばいいのか。どこまでやっていいのか。間違えたらどうするのか。
考えることが増えてしまうからです。
それなら、すでに毎日やっている仕事から1つ選びます。
たとえば、こんな仕事です
- 毎朝の問い合わせメールを確認する
- 予約表に変更がないか確認する
- 会議の内容を要約する
- 毎週の数字を集計する
- いつも検索している情報を調べる
こういう仕事なら、AIを使う目的が最初から分かっています。
AIについて詳しくなることを目標にする必要はありません。
まず、いつもの仕事が1つ楽になる。
その経験ができてから、次の仕事へ広げればいいのです。

社員がAIを使わない会社で、よく聞く指示
「社員がAIを使ってくれない」という話を聞いて、どんな指示を出しているのか尋ねると、だいたい似ています。
これでは少し動きにくい
「AIを使ってみて」
「業務効率化に使って」
「まず触ってみて」
「何か便利な使い方を考えて」
経営者側からすると、「自由に使っていいよ」という親切な言葉かもしれません。
でも、受け取った側から見ると、かなり難しい指示です。
何に使えばいいのか。どこまでやっていいのか。間違えたらどうするのか。仕事として使って問題ないのか。
分からないことが多いので、結局触らなくなります。
そして使わない状態だけを見て、「やっぱり年配の社員には無理だった」となってしまう。
それは少し、もったいないと思います。
「AIを使って」ではなく「誰が・何を・いつ」に変える
社員にAIを使ってもらいたいなら、最初の指示はできるだけ小さくします。
たとえば、
こんなふうに渡します
「○○さん、毎朝9時に、この予約表をAIで確認してみてください」
これなら、
誰が:○○さん
何を:予約表を確認する
いつ:毎朝9時
まで決まっています。
やることが具体的なら、「AIについて勉強してから始めよう」と思わなくても動けます。
AIの知識を増やすより先に、ひとつ仕事が終わる経験を作る。
私は、その順番のほうが定着しやすいと感じています。
社員にAIを渡すときの3つのコツ
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1まず1人に、1つだけ渡す
最初から全社員へ「今日からAIを使いましょう」と広げる必要はありません。
まず一人決めます。そして、その人が普段やっている仕事の中から、1つだけAIで試します。
たとえば、毎朝のメール確認、議事録の整理、定型文の下書き、毎週の数字集計などです。
その一人が「これなら使える」となれば、社内に実例ができます。
社内では、AIの説明資料より「○○さんが実際に使えている」のほうが強い。
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2マニュアルより、隣で1回やってみる
私は、最初の1回は説明資料だけ渡すより、一緒に操作するほうが早いと思っています。
なぜなら、その場で「どこで手が止まるか」が分かるからです。
「どこを押せばいいですか?」
「これを入力して大丈夫ですか?」
「間違えたら戻せますか?」
こうした小さな不安で止まることがあります。
これは能力の問題というより、初めて触るものに対する慎重さです。
意外と効くひと言
「間違えても大丈夫です。今日は一緒にやります」
これだけで、手が動くことがあります。
最初から「覚えてください」と言うより、安心して試せる状態を作るほうが先です。
step
31週間後に見に行く日を決める
AIを一度教えて、そのままにすると、忙しい日常の中で使われなくなることがあります。
だから最初に、「来週の水曜日に、一度どうだったか見せてください」と決めておきます。
ここで重要なのは、できていなくても責めないことです。
使えなかったなら、理由を聞きます。
操作が分からなかったのか。使う場面がなかったのか。結果が信用できなかったのか。忙しくて忘れたのか。
止まった場所は、失敗ではなく、次に直す場所です。
50代の私が、新しいことを覚えるときに変えたこと
これは社員教育だけの話ではありません。
私自身も、新しいことを覚えるのが昔と同じではないと感じています。
今年、50歳で資格試験を受けました。若いころのように、一度読めば頭に入るという感じではありません。専門用語も、何度も「あれ、何だっけ」となりました。
そこで、全部を一度に覚えようとするのをやめました。
今日はこれだけ。
一つできたら、次に進む。
このやり方にしたら、ずいぶん楽になりました。
若い人のように、いろいろ触りながら覚えるほうが合う人もいます。一方で、一つずつ目的を決めたほうが安心して進める人もいます。
だから「年齢が高いから無理」と決めるより、その人が覚えやすい大きさまで仕事を小さくする。
そのほうが現実的だと思っています。
最初に渡すなら「見張り・確認・記録・集計」
では、社員に最初にどんな仕事を渡せばいいのでしょうか。
私は、いきなり企画や文章制作を任せるより、結果が分かりやすい仕事から始めることをおすすめしています。
最初に探しやすい4つ
- 見張り:変化があったら知らせる
- 確認:決めた条件に当てはまるかを見る
- 記録:数字や出来事を残す
- 集計:決まった数字をまとめる
こういう仕事は、「できた・できない」が分かりやすいので、最初のAI体験に向いています。
「社員が使わない」を本人のせいにする前に確認したいこと
社員がAIを使わないと、つい「新しいものを嫌がっている」「勉強する気がない」と思ってしまうことがあります。
でも、自分自身が半年止まった経験があるので、私は少し待って考えるようになりました。
まず会社側で確認すること
・何に使うのか具体的になっているか
・誰が担当するのか決まっているか
・いつ使うのか決まっているか
・最初の1回を一緒にやったか
・困ったときに聞ける人がいるか
・一度にたくさん覚えさせていないか
・あとで結果を見る日を決めているか
ここまでやっても合わなければ、別の仕事を試せばいい。
AIに人を合わせるのではなく、その人の仕事にAIを合わせる。
私は、そのほうが社内には定着しやすいと思っています。
まとめ|社員がAIを使わないなら「人」より先に「渡し方」を見る
この記事のポイント
- 「AIを使って」だけでは、何をすればいいか分からない
- 最初は「誰が・何を・いつ」を具体的にする
- 全員ではなく、まず1人・1作業から始める
- マニュアルだけでなく、最初の1回を一緒にやる
- 1週間後など、結果を見る日を先に決める
- 使えなかった場所を責めず、次の改善点として見る
- 最初は見張り・確認・記録・集計などから始めやすい
社員がAIを使ってくれないとき、「この人には無理なのかな」と考える前に、一度、渡した言葉を見直してみてください。
私自身、「AIを活用する」では半年動けませんでした。
でも、「問い合わせメールを決まった時間に確認する」なら、1時間で動けました。
同じ人間です。
人を変えるより先に、仕事を小さくする。
社内でAIを定着させる入口は、案外そこにあるのかもしれません。
群馬・埼玉北部で社内のAI活用を始めたい方へ
Mikkeでは、群馬県・埼玉北部を中心に、「AIの使い方を教える」だけではなく、実際の仕事の中から、最初に何を任せるかを一緒に決めるところからお手伝いしています。
「社員にAIを使ってほしいけれど、何を渡せばいいか分からない」「一度研修したけれど、その後使われていない」という段階からでも大丈夫です。
社員のAI活用についてよくある質問
Q. パソコンが苦手な社員でもAIは使えますか?
使える可能性は十分あります。
最初からAI全体を覚えてもらうのではなく、仕事を1つに絞り、最初の1回を隣で一緒にやるところから始めてみてください。
Q. 何人くらいから始めるのがいいですか?
まず1人で十分です。
一人の具体的な成功例ができると、他の社員も「自分の仕事でも使えるかもしれない」と考えやすくなります。
Q. 最初は何をAIにやってもらえばいいですか?
毎日・毎週繰り返していて、結果の確認方法が分かりやすい仕事から探します。
見張り・確認・記録・集計は候補にしやすいでしょう。
Q. 一度導入したのに、社員が使わなくなりました
「使ってください」で終わらず、1週間後などに一度確認する日を作ってみてください。
使えていなければ、責めるのではなく、どこで止まったのかを確認します。その場所が、次に直すポイントです。