AIというと、「文章を書いてもらう」「資料をまとめてもらう」「仕事を効率化する」といった使い方を思い浮かべる方が多いと思います。
私自身も、普段の仕事でAIを使っています。
でも、これから事業をする人が考えなければならないのは、「自分がAIをどう使うか」だけではないのかもしれません。
先日、電通がAI時代の新しい購買行動モデル「AIJES(アイジェス)」を発表しました。
これを見て、私がいちばん気になったのは、AIによってマーケティングの方法が変わることよりも、お客様が商品やサービスを選ぶまでの行動そのものが変わり始めているということでした。
この記事でお伝えしたいこと
AI時代に変わるのは、私たちの仕事だけではありません。お客様の「調べる・比べる・決める」という行動も変わります。だからAI活用を考えるときは、業務効率化だけでなく「お客様がAIをどう使って商品を選ぶのか」まで見ておきたいと思っています。
約20年前、AISASが購買行動の変化を表しました
Webマーケティングを勉強したことがある方なら、「AISAS(アイサス)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
- Attention(認知)
- Interest(興味)
- Search(検索)
- Action(購買)
- Share(共有)
インターネットが普及し、消費者が自分で検索して商品を調べ、購入し、その経験を共有するようになった。
そうしたWeb時代の購買行動を表したモデルとして、電通が2004年に提唱したものです。
私も長くWebマーケティングに携わってきたので、「検索される」という行動を前提に、ホームページやSEO、SNSなどを考えてきました。
ところがAIが普及して、ここに新しい行動が入ってきました。
自分で検索結果を一つずつ見比べる前に、AIに聞く。
この行動です。
電通が発表したAI時代の購買行動「AIJES」とは
2026年9月、国内電通グループはAI時代の新しい購買行動モデルとして「AIJES」を発表しました。
AIJESは、次の5つで構成されています。
- Archive(蓄積)
- Interaction(問答)
- Judgment(判断)
- Engagement(参加)
- Score(評価)
特徴的なのは、人間だけで情報を探して判断するのではなく、人とAIが協働しながら意思決定していくことを前提にしている点です。
電通は、従来の検索エンジンやSNSによる情報取得に加えて、AIに問いを立て、その回答を参考に意思決定するケースが増えていると説明しています。
ただし、「AISASが終わってAIJESに全部置き換わる」という意味ではありません。
電通自身も、購買行動が変化している途中では、AISASとAIJESがしばらく並走するとしています。
検索がなくなるのではなく、「自分で検索して比較する」に加えて、「AIと問答しながら比較・整理する」という選び方が増えてきた、と考えると分かりやすいと思います。
考えてみたら、私自身もすでにやっていました
AIJESを見ながら、自分の普段の行動を振り返ってみました。
何かを選ぶときに、以前ならGoogleで検索して、いくつものページを開いて比較していました。
もちろん今でも検索はします。
でも、その前後でAIに聞くことが増えています。
たとえば、
- 「AとBは何が違う?」
- 「この条件なら、どちらが向いている?」
- 「比較するときに見るポイントを整理して」
- 「私の場合なら、何を確認してから選べばいい?」
こんなふうに、単に答えを探すのではなく、AIとのやり取りをしながら考えを整理することがあります。
ここが、従来の検索との大きな違いだと思いました。
検索では、自分で検索キーワードを考え、ページを開き、情報を比較します。
AIなら、条件を追加しながら質問できます。
「もう少し安いものなら?」
「初心者なら?」
「群馬県内なら?」
「この条件を優先したら?」
会話しながら、候補を絞っていけるわけです。
小さな会社にとって重要なのは「AIに選ばれる」だけではない
ここからが、私たち小さな会社や個人事業主に関係するところです。
お客様がAIに相談しながら商品やサービスを選ぶようになるなら、Web上にどんな情報を出しておくかも考え直す必要があります。
たとえば、
- どんな人向けのサービスなのか
- 何ができるのか
- 何ができないのか
- 料金はいくらなのか
- どの地域に対応しているのか
- 他のサービスと何が違うのか
- 誰が提供しているのか
- 実際に確認できる実績は何か
こうした情報です。
AIに推薦してもらうためだけに書くのではありません。
お客様が比較・判断するために必要な情報を、Web上で確認できる状態にしておく。
こちらのほうが本質だと思っています。
SEOやSNSが不要になるわけではありません
「では、これからはSEOではなくAI対策をすればいいの?」と思うかもしれません。
私は、そう単純ではないと思っています。
AIJESでも、AIだけですべての購買行動が完結するとはされていません。
人はAIに聞いたあと、公式サイトを見るかもしれません。
SNSを確認するかもしれません。
Googleマップの口コミを見るかもしれません。
知人に聞くかもしれません。
そして最後に決めるのは、人間です。
AIが新しい接点として増えたからこそ、ホームページ、SEO、SNS、Googleビジネスプロフィールなどにある情報をバラバラに考えないことが、これまで以上に重要になる。
私はそう捉えています。
AIOを「AIに選ばれるテクニック」だけにしない
最近は、AIO、LLMO、AI検索対策といった言葉も増えてきました。
AIから自社の情報を見つけてもらいやすくすることを考えるのは大切です。
でも、私は「AIにどう推薦させるか」だけを追いかけると、少し違う方向へ行ってしまう気がしています。
そもそもAIの向こう側にいるのは、お客様です。
お客様がAIに、
「自分にはどれが合う?」
「この会社とあの会社は何が違う?」
「このサービスを頼む前に確認することは?」
と聞く。
そのとき比較・判断できる材料が、自社のWeb上にあるか。
ここがポイント
AIOを「AI向けのテクニック」として考える前に、「AIを使って比較するお客様に、判断材料を渡せているか」と考えてみる。私は、この視点のほうが小さな会社には実践しやすいと思っています。
AI時代のマーケティングを知るなら、まず自分がお客様になってみる
では、この変化をどうやって実感すればいいのでしょうか。
私は、難しいマーケティング理論を覚える前に、一度、自分自身がお客様の立場でAIを使ってみるのがいいと思います。
たとえば、次に何かを買ったりサービスを探したりするとき、すぐGoogleで検索する前にAIにも聞いてみる。
- 旅行先を相談してみる
- 飲食店の候補を出してもらう
- 商品Aと商品Bを比較してもらう
- 自分の条件に合うサービスを整理してもらう
そして、AIが何を聞き返してくるのか、何を基準に整理するのか、どんな情報が足りないのかを見てみる。
ここで大事なのは、「AIの回答が正しいか」だけを見ることではありません。
自分自身の選び方が、AIとの会話によってどう変わるのかを観察することです。
マーケティングの基本は、やっぱり「お客様を見ること」
AISASが提唱されたのは2004年です。
インターネットが普及したことで、人の情報収集や購買行動が変わり、その変化を捉えるために新しいモデルが生まれました。
そして今、AIの普及によって、また人の行動が変わり始めています。
でも、マーケティングの基本そのものは変わらないと思っています。
お客様が、どうやって知り、何を調べ、何と比較し、何を理由に決めるのかを見ること。
変わるのは、その途中で使う道具です。
Google検索だったところにAIとの問答が加わる。
SNSだけでなくAIから商品を知ることもある。
だから私たちも、「昔こうだったから」だけでマーケティングを考えない。
今、お客様の行動がどう変わっているのかを見る。
私は、こういう変化を面白がりながら、自分でも試していきたいと思っています。
まとめ|AIを使うだけでなく「AIを使うお客様」を見る
AI活用というと、どうしても業務効率化の話になりがちです。
文章作成を早くする。調査を任せる。資料を作る。業務を自動化する。
もちろん、それも大切です。
でもマーケティングを考えるなら、もう一つ見ておきたい。
AIによって、お客様自身の行動がどう変わるのか。
AIJESは、その変化を考える一つのきっかけになります。
まず次に何かを選ぶとき、一度AIに相談してみてください。
そのとき自分が何を質問し、何を比較し、最後に何を見て決めたのか。
そこを観察すると、これから自社のホームページやSNSに何を書いておくべきなのかも、少し違って見えてくると思います。
Mikkeでは、AIを仕事に導入することだけでなく、AI時代にお客様の情報収集や選び方がどう変わるのかも含めて、Web集客の導線を一緒に考えています。
「今までのWeb集客のやり方のままでいいのか」と感じ始めた段階から、ご相談いただけます。
よくある質問
Q. AISASはもう古くて使えないのでしょうか?
そういう意味ではありません。電通も、購買行動の過渡期ではAISASとAIJESがしばらく並走するとしています。検索やSNSによる情報収集がなくなるのではなく、そこに「AIに聞きながら考える」という行動が加わってきた、と捉えると分かりやすいと思います。
Q. AIJESになったらSEOは必要なくなりますか?
SEOが不要になるとは言えません。検索エンジン、SNS、公式サイトなど、AI以外の情報源も引き続き使われます。大切なのは、SEOかAIかという二者択一ではなく、お客様が複数の接点を行き来する前提で情報を整えることです。
Q. 小さな会社はAI時代に何から始めればいいですか?
まず、自分がお客様になってAIで商品やサービスを比較してみることをおすすめします。そのうえで、自社について「誰向けなのか」「何ができるのか」「料金や対応地域はどうなっているのか」など、比較・判断に必要な情報がWeb上にあるか確認してみてください。
Q. AIに推薦されるための対策をすればいいのでしょうか?
特定の対策をすればAIに必ず推薦される、という保証はありません。AIへの見え方だけを追うより、まずは人間のお客様が比較・判断できる、正確で具体的な情報をWeb上に整えることを優先したほうがよいと考えています。